Die Orgel

北海道大学クラーク会館大講堂 オルガン

4.ストップの分類と組み合わせ


・ストップの分類

    ストップは音色によって幾つかの種類に分類されます。 分類を知っておくとストップを組み合わせる時に大変に役に立ちます。 ここでは厳密な分類はおいて、 北大のオルガンを演奏するのに知っておくのに役に立つ 大まかな分類を示します。

    まずパイプはその音の発生機構から、 1.フルー族2.リード族 に大別されます。以下フルー族とリード族に分けてそれぞれ解説します。

・フルー族

    リコーダーやフルートのように、 空気の流れる方向が振動して、 その振動をパイプで共鳴させることで音が発生します。 左図はその仕組みを示します。 青い矢印の ように送り込まれた空気が、核(Kern)という仕切りによって、 歌口(Aufschnitt)にやってきます。 ここで、空気の流れは管の外へ出たり管内の上方に出たり します。 この振動が管の上部に共鳴して発生するわけです。 リードのようなものがないにも関わらず空気の振動が起こる仕組みは リコーダーと同じなのですが、 「自励振動」と呼ばれる振動の機構にあります。 自励振動の起こした振動が管の上部で共鳴し、色々な倍音の中でこの自励 振動を持続させるような倍音の振動が音色として実現するようです。

    管はてっぺんの閉じ具合によって、 開管(左)・閉管(右)・ 半閉管 (閉管の上に小さな穴を空けて、 そこに短い管を取り付けたもの)に分けられます。

    パイプの長さは音の高さと関係があります。 パイプが2倍の長さになれば音が1オクターブ高くなります。 パイプが半分の長さになれば音が1オクターブ低くなります。 また、左の図のように同じ長さの開管と閉管を比べると、 開管の方が1オクターブ高い音がします。

    また音色は管の形によって決まります。 管が太いと基音の強い軟らかい音色が、 管が細いと次第に倍音の混じった鋭い音色が出ます。 また、 (海苔缶のような)円筒形かあるいは円錐形か、 また半閉管のように色々なものが取り付けられた管かどうか、 といった形状の違いもまた音色に変化を付けます。

    このように音の基本要素である音の高さや音色が、 パイプオルガンではパイプの長さ・太さ・形のような形状 に変化を付けることで実現されるます。 フルー管は1-1.プリンシパル族1-2.フルート族に分けられます (ストリング族は北大にはないので略)。

    1-1.プリンシパル族

    開管で通常円筒形。 同じ音色が色々な長さで用意されています。 開管構造であり太さが変わらないことから、 偶数倍音が強調されます。 7.Principalを基本として色々な長さの仲間 (Principal bass, Octav)を加えることで音を大きくすることが出来ます。

    北大オルガンでは、

      2.Principal bass 8' 5.Octav 2' 7.Principal 8' 9.Octav 4'
      19.Weiden pfeife 8' 21.Principal 4' 23.Octav 2'
    が、この仲間にあたります。

    1-2.フルート族

    フルート族には、 閉管・開管・半閉管 (閉管の上に細い管を立てた管)、 それに円筒形・円錐形、 というように様々な形状のものがあります。 プリンシパル族 に比べると歌口の形状は幅が狭く上下に広くなっているのが特徴です。 以下、開管・半閉管・閉管に分類します。

    1-2-a.閉管フルート(ゲダクト)族

    管の先端は、 ストッパー(栓)によって閉じられています。 閉管構造であることから、 奇数倍音を強調します。 ただ、 閉管フルートは比較的は径の太い傾向があり、 このことにより基音が強調されます。 奇数倍音管 (ミューテーションストップ、オクターブ以外の関係にある基音を持つ) と組み合わせて特色のある音色作りをするときの基本ストップとして 有効です。

    北大オルガンでは、

      1.Subbass 16', 3.Pommer 8', 8.Holz gedackt 8', 22,Quintade 4'
    が閉管に相当します(Holz:木材)。 このうち、 Quintadeは閉管としては径が細く、他の閉管よりも倍音を多く含みます。 Quinteが第3倍音を指す語であることから想像出来るように、 第3倍音(北大オルガンの場合、 4'に対する第3倍音、1 1/3')を 沢山含みます。

    1-2-b.半閉管フルート族

    半閉管は、 閉管の先端に細い円筒状の開管や円錐台形の金具を取り付けたもので、 これにより第5倍音や第6倍音が強調され、 音色が特徴づけられます。

    北大オルガンでは、

      10.Rohrflöte 4', 20.Koppelflöte 8'
    が半閉管に該当します。

    1-2-c.開管フルート(フルート)族

    北大オルガンでは、
      4.Spitzflöte 4', 12.Waldfl&omul;te 2'
    が開管に該当します(Spitz:とがった、Wald:森・木)。

    Spitzflöteは先端に向かう程太くなった管です。 そのために、 角笛に似て第2倍音(今の場合は2')が目立って発生します。 一方、Waldflöteは上に行く程細くなっており、 これは吹き口から離れるにつれて細くなる リコーダーやフルートの形に似ています。

    1-2-d.ミューテーション族

    普通のストップが鍵盤で押さえた音に対して偶数倍音の音 (8',4',2',...) を基音に持つのに対し、 ミューテーション族は、奇数倍音の音 (2 2/3', 1 1/3'...) を基音に持ちます。これは鍵盤でドの音を押さえた時に、 実際にはド以外の音が鳴ることを意味します。 単独で用いずに、 8'や4'のストップと同時に用いて 音色に特色を付けます。
    北大オルガンでは、
      11.Nasard 2 2/3', 24.Larigot 1 1/3'
    がミューテーション族に該当します。

    1-3. ミクスチュア族

    これまでのストップは一つの鍵盤が一つのパイプに結びつきましたが、 ミクスチュア族に属するストップは、 一つの鍵盤に対して複数のパイプが結びつきます。

    北大オルガンでは、
      13.Mixture, 25.Sesquialter, 26. Scharff
    がミクスチュア族に該当します。 このうち、 25.Mixtureや26.Scharffは、 第5倍音列(1 3/5')に該当する倍音を弱めるように働きます。 この結果として、 音色に明るさや強さが与えられます。 一方、 25.Sesquialterは、 第3倍音(2 2/3')・第5倍音(1 1/3')・第6倍音(1 3/5')を組合せたストップで、 音色に変化が付きます。

・リード族(コーラスリード族とソロリード族)

    クラリネットやオーボエのように、 空気がパイプを抜ける所でリードが振動して、 その振動をパイプの上に付けられた共鳴管に共鳴させることで音が発生します。

    北大オルガンでは、

      6.Fagott, 14.Dulcian, 15.Trompete, 27.Rohr schalmey
    がリード管に該当します。

・北大オルガンのストップ分類

    北大オルガンのそれぞれのストップを上に従って分類すると下表のようになります。

    パイプ フルー族 プリンシパル族 2.Principal bass (8')
    5.Octav (2')
    7.Principal (8')
    9.Octav (4')
    19.Weiden pfeife (8')
    21.Principal (4')
    23.Octav (2')
    フルート族 閉管(ゲダクト)族 1.Subbass (16')
    3.Pommer (8')
    8.Holz gedackt (8')
    22.Quintade (4')
    半閉管族 10.Rohlflöte (4')
    20.Koppelflöte (8')
    開管(フルート)族 4.Spitzflöte (4')
    12.Waldflöte (2')
    ミューテーション族 11.Nasard (2 2/3')
    24.Larigot (1 1/3')
    ミクスチュア族 13.Mixture (4f)
    25.Sesquialter (1-3f)
    26.Scharff (3-4f)
    リード族 6.Fagott (16')
    14.Dulcian (16')
    15.Trompete (8')
    27.Rohr shcalmey (8')

・ストップをどう組み合わせるか

    さて、弾きたい曲に対してこれらのストップの組み合わせ(レジストレーション) をどう決めるかは、 ペダルをマスターするのと同じ位、 オルガンに特有の技術として重要です。 まずは、 8フィートのもの(7.Principal, 8.Holzgedackt, 19.Weiden pfeife) から一つを基準になる音として選び、そこに色々と加えていきます。 音量が欲しい時には色々な倍音のストップを加えていきます。音量は ともかくとして音色に変化が欲しい場合には8フィートに2フィートを加えたり、 ミューテーションに属するものを加えると効果的です。 同じ高さのストップを2種合わせることは 音色が変わらない割に音がにごるなどの悪影響を及ぼすことが多いので よく考えましょう。

    幾つかの楽章から成る曲では楽章に変化を付けると良いでしょう。 例えば急楽章(はやい楽章)と緩楽章(ゆっくりの楽章)からなる曲の場合には、 急楽章をプリンシパル族で、 緩楽章はフルート族で弾いたりして2つの族を使い分けたりします。

・欲しいストップがない時

    楽譜によってはどのような音色が望まれるかストップが指定されて いる場合があります。バッハのものには殆んどありませんが、特に 楽器の規格化が進んでいたフランスの作品などにはストップが明示 されている場合が多いものです。しかし、指定されているストップ 名が必ずしもコンソールに見当たるとは限りません。そこで代わり になるストップを探すことになります。 その参考のために作成したのが以下の表です。

    欲しいストップ 代用ストップ 欲しいストップ 代用ストップ
    Acuta Mixture Quintade Pommer
    Bourdon Holz gedackt Quintadena Quintade
    Carillon Mixture Rankett Dulcian
    Clairon(4') Octav(4') Regal Dulcian
    Cornet 8'+4'+2 2/3'+2' Ripieno Mixture
    Diapason Principal Sourdun Dulcian
    Dulciana Principal Spitzflöte(8') Koppelflöte
    Fourniture Mixture Stillgedackt Holz gedackt
    Nineteenth Larigot Stopped Flute Holz gedackt
    Plein Jeu Mixture Twelfth Nasard
    Prestant Octav Zimbel Mixture

    中には殆んど同一の内容のストップが見付かることもあるし、 同じではないけれど近い音色のものが見付かることもあるでしょう。 表の作成には、 A.B.JenningsのFirst Elements of Organ Techniqueを参考にしました。


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更新:1999.10.31 製作:北大オルガン研究会 <webmaster@organ.dyndns.org>